「こちらがおむつ替えのスペースです」
案内された場所には、園児ごとに仕切られたカゴが整然と並んでいた。
誠はカゴの中を見ながら、担当の先生にルールの詳細を尋ねた。
「おむつの準備については、どのような決まりになっていますか?」
「はい、当園では毎日5〜6枚、すべてに名前を書いて持参していただいています。
使用済みのおむつについては、衛生面を考慮して、こちらですべて処分しています」
「名前を書いて持参、処分は園で。なるほど、分かりました」
見学を終えた帰り道、恵がふと思い出したように口を開いた。
「そういえば、別の園の見学に行ったママ友が、『おむつのサブスク』がある園にしたって言ってたわ。サブスクって、保育園でもあるのね」
「サブスクか……。確かに最近増えているというニュースを見たな。少し調べてみよう」
その日の夜。誠と恵はリビングで、ノートパソコンを囲んだ。
「『おむつサブスク(手ぶら登園)』……。月額定額で、園に直接おむつが届く仕組みか」
誠が画面を見ながら、ホワイトボードにメリットとデメリットを書き出していく。
「メリットは、何と言っても【朝の時間の節約】だね。毎日名前を書く手間、カバンに詰める手間がなくなる。
対してデメリットは【月額費用】と、おむつの【銘柄が選べない】こと。肌が弱い子だと、園が用意する銘柄が合わない可能性もある」
恵が自分の生活をイメージしながら呟く。
「毎日名前を書いて持参して、園で捨ててもらう今の見学先のスタイルは、コストはかからないけど『名入れ』の手間は残るわね。サブスクがある園なら、その手間すらなくなる……」
誠が中立的な視点でまとめた。
「どちらが優れているかではなく、これは一つの『判断材料』だね。
毎日のおむつ作業を『子供との関わり』の一部として苦にならないか、それともその時間を1分でも削って、朝のゆとりを作りたいか。
園自体の教育方針や雰囲気が一番大事だけど、こうした『毎日の小さなルールの積み重ね』が、入園後の僕たちの生活のリズムを左右することになる。
この点も踏まえて、自分たちに合う園を絞り込んでいこう」
恵はノートに「おむつ:持参(名入れ要)/処分:園」とメモした。
理想の園選びは、こうした細かな「日常の解像度」を上げる作業でもあった。
