「教育方針も大事だけど、やっぱり最後はここに戻るわね」
恵はノートの最初のページに書いた「安全・安心」という文字を指差した。
誠は、集めたデータのなかから、自治体の監査結果や園の配置基準に関する数字を抜き出した。
「そうだね。教育は『建物』だとしたら、安全と衛生は『土台(基礎)』だ。土台がグラグラしていたら、どんなに立派な教育を積み上げても意味がない」
誠は、園長先生との最後の確認で、あえて厳しい質問を投げかけた時のことを思い出した。
「先生、配置基準ぎりぎりの人数で回されているようですが、急な欠勤やトラブルの際のバックアップ体制はどうなっていますか?」
先生は、ごまかさずに誠の目を見て答えた。
「鋭いご指摘です。当園では基準以上のフリーの先生を配置し、お互いのクラスをフォローできる体制を整えています。掃除や消毒の担当を分けることで、保育士が『子供から目を離さない時間』を物理的に確保しているんです」
誠は、その回答と、園の隅々まで行き届いた清掃状況、そして何より先生たちの表情に余裕があるかを再確認した。
帰り道、誠は恵にこう伝えた。
「【例え話】をしよう。
園の安全管理や人員配置は、スマートフォンの『OS』のようなものだ。
最新のアプリ(教育プログラム)を動かすには、安定した最新のOS(安全な環境)が不可欠だ。OSが古い、あるいは脆弱だと、アプリは途中で止まってしまう。
今日見た園は、OSのアップデートを怠らない、信頼できる基盤を持っていると感じたよ」
恵は深く頷いた。
「どれだけ素晴らしい教育を掲げていても、先生が疲れ切っていたり、安全への意識が低かったりしては葵を預けられないものね。この『最低基準』をクリアしていることが、すべてのスタートラインなんだわ」
二人は、最も大切な「命の預け先」としての信頼性を、自分たちの目でしっかりと確認し、最終選定への自信を深めた。
